世界を敵にまわしても


「……はぁ」


ベッドに埋めていた顔を上げて、ノロノロと立ち上がる。


とりあえず電気をつけて、開けっ放しのカーテンを閉めに窓際へ向かった。


ミルク色のカーテンに手を伸ばすと、真っ暗な空にぽつんと浮かぶ月が目に入る。


ぼんやりと鈍色に光るそれは、まるで自分のようだと思った。


美しい月など、自分には合わない。


ただひたすら自分を翳ませて、本当の姿が見えないように、知られないようにするあたしのどこが、美しいと言えるのか。


「……」


ギュッとカーテンを握り締めて、伏せていた目でもう一度空を見上げる。


薄く白い靄に包まれて、かすんで見えるおぼろ月はジッと動かずにいた。


……太陽と月が決して出逢わないように。あたしもきっと、光を見つけることが出来ないんだと思う。


淡い希望を抱いても、1年生の時は何も変わらなかったし。


この先変えることも出来ないんだと、何となく思う。



リビングからかすかに聞こえた笑い声をかき消すように、あたしは勢いよくカーテンを閉めた。
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