世界を敵にまわしても
制服から部屋着に着替えて、お腹が空いたと思いながらもリビングへ降りることに抵抗を覚える。
何かあったかな……。
ベッドに腰掛けて鞄の中を漁ると、見事に教科書とノートばかり。そして見たくなかった1冊の本。
「……」
本を見ただけでイラッとするなんて、人生で初めての経験。
ム、ムカツク……!思い出しただけで腹が立つ。
あんなに悪びれもなくズバズバ言う人のどこがカッコイイんだ。
嘘つくのが下手だの意地っ張りだの、好き勝手言うだけでどこも優しくないし、ただの性悪だと思う。
……やめよう。朝霧先生のことを考えるなんて時間の無駄だ。どうせもう、授業以外で関わらないんだから。
予習と復習をやろうと切り替えた頭が、不意に残っていた悔しさを思い出す。
楽譜……!
本を開いて、読めなかった楽譜をもう一度解読しようと思ったのに。何度頁をめくっても、楽譜を見つけることは出来なかった。
「……ばかにしてる……」
どこかに落としたとか、失くしたなんて考えは一切浮かばない。
何なんだ本当に!
バンッと本を勢いよく閉じて、もう関わらないと決めたはずが、明日の放課後に音楽室へ行くことに決めていた。
朝霧 奏。
あの人が、抜き取ったに決まってる。
・