世界を敵にまわしても
「つか何、風邪治ったん?」
「え? あぁ、治ってないから離れた方がいいよ」
そう言い切る前に椿は離れて、あたしを睨む。
「ウチにうつすんじゃねー」
「……もうほとんど治ったよ」
清々しいほどハッキリ言ってくれる椿に苦笑が零れる。すると、椿はジッとあたしを見て首を捻った。
「何か痩せてね?」
「あぁ……風邪で食欲なくて」
教室に向かいながら、あたしは椿の質問に答える。
「何かあったべ」
「は?」
階段を上りながら、あたしは間抜けな声を出す。椿を見ると、金髪を揺らしながら後ろを振り返って、言葉の続きを言った。
「朝霧も風邪で休んでたから。昨日まで」
「……風邪?」
「金曜の夜にすげー雨降ったじゃん。そん中傘も差さないで居たからーって笑ってたけど」
……何ソレ。あたしが帰った時は雨降ってなかったじゃん。
そもそも駐車場に居たのに、車に乗ってなかったの?
「―で、美月も風邪だっつーじゃん。2人して雨ん中何してたわけ?」
「……や、雨降った時にはもう一緒じゃなかったし……」
「何ソレ、どんなシンクロだよ」
あたしが聞きたいくらいだ。
……寝込んでいた3日間、先生からの連絡は一切なかった。
携帯が鳴るのを待ってる自分も、自分から連絡しないことにも虚しくなって、あたしは携帯を開くのもやめたけど。
……先生も風邪ひいてたの? 何で?