世界を敵にまわしても


「美月と俺ってさ、他の生徒より奏ちゃんと仲良いじゃん? てか確実にそうだと思うんだけど。だから、美月にも言っとこうと思って」

「……これは、椿に言っても大丈夫だよ」


あたしも、先生との今の状況がどうにもならなかったら、椿に相談しようと思ってたことだ。


「まぁなー。椿はいいけど、他の奴らには隠してた方がいいよな? っても聞いても分かんない奴が大半だろうけど。俺ずっと、似てるなーとは思ってて……でもまさか本物だとは思わねぇじゃん!」

「うん……ビックリだね」


あたしは知らなかったフリをして、晴に微笑む。


「氷堂さんと奏ちゃん……ってか、この場合ソウ?が付き合ってたとか、俺的にすげー衝撃」

「あたしも衝撃」

「だよなー!?」

「ねぇ、コレ貰っていい? 椿にも言いたい」

「別にいいけど……抜け駆けすんなよ!? 奏ちゃんに聞く時は俺も一緒な!」

「うん、分かった」


そう微笑むと、晴は「おし! それだけ!」と言って立ち上がった。


「はぁー…俺この話を美月にしたかったんだよ金曜日からずっと!」

「ははっ! そうなの?」


あたしは紙切れをポケットにしまいながら、廊下へ出た晴に心の中で謝る。


……ゴメンね晴。


あたしはこの記事を、椿じゃなくて先生に突き付ける。



左手の怪我で“ピアニスト”としての将来を失った、『朝霧 ソウ』に。



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