世界を敵にまわしても
「あー……なんか、3年生で手を焼いてる生徒が居るらしくて、大変ですねって言ったら……そう返ってきた」
「うわ、言いそう」
言いそうなんだ。
宮本くん派らしいサトミがそう言って、あたしは心の中でホッとする。
「3年生の誰だろうね~」
「あの人じゃない、ほら前に停学になった先輩……」
どの学年にも問題児っているんだな。
話題は空想の3年生に逸れていき、あたしは箸を置いて席を立った。
「美月、どこ行くの~」
「図書室。昨日の本、結局あたしが返すことになったから」
「あ、そうなんだ。一緒行く~?」
「大丈夫、返すだけだし」
「そか、分かったぁ」
ミキと「行ってらっしゃーい」と言うサトミとユイに微笑んで、あたしは1人食器を下げに行く。
……普通だったかな。
大丈夫だよね、昨日あたしの事冷めてるって話してたんだから、そんなに気にする事もない。
あからさまに冷めた態度さえ取らなきゃ大丈夫なはず……。
「ごちそうさまでした」
厨房の中に居る調理のおばさんにそう言うと、笑顔で「そこに置いといてね~」と返された。
返却口にトレーごと置こうとすると、カウンターにフッと影が落ちる。
「あれ? 高城だ」
「……」
わざとらしい。
右上に視線を向けると、やっぱり朝霧先生が立っていた。