世界を敵にまわしても


「調子はどう? 友達ごっ……!」

「すいません、よろけました」


わざと体をふら付かせて、朝霧先生の横腹に肘鉄をお見舞いしてやった。


痛がる様子を無視してトレーを置くと、朝霧先生は肩を震わせている。


そんなに痛かったのかと思ったら、身に覚えのある声が耳に届いた。


「……ふっ、くくっ……!」


痛がってるんじゃなくて、また笑ってたらしい。


「肘テツ……!」


――ダメだ。イラッとする……!


「先生ー? どうしたのー?」

「お腹痛いの?」


そう声を掛けてきた女子生徒と入れ替わりで、あたしは朝霧先生を見ずに出入り口へ向かう。


ガヤガヤと騒がしい食堂を出ると、春風が肌をくすぐって溜め息が出た。


なんだってこんなに苛立つのか。


相手の言動がいちいち癪に障るなんて、よっぽど相性が悪いに決まってる。


……いや、あたしと相性いい人なんて会ったことないけど、朝霧先生は絶対合わない。それだけは言える。むしろ本人に言いたいくらいだ。



「高城っ!」



――ほら。

嫌過ぎて、耳の奥まで声が響く。


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