世界を敵にまわしても


……前みたいに話してるはずなのに、そうなるように今日ここに来たはずなのに。


自然に振る舞ってるはずなのに、どこか違和感があって。


お互い笑顔を見せてるはずなのに、どこかぎこちなくて。


1週間の間に、見えない壁があたしと先生を分け隔ててしまったみたいだ。


先生と生徒という境界線があった時みたい。


……ううん、その時の方がマシだったかもしれない。


『俺、我慢強くないんだよね』


そう言っていた先生がいつまで経っても、あたしが居るベランダに足を踏み込まないから。



「せん……」


一歩踏み出して、あたしの足は止まる。音楽室に近付く足音と、微かな話声が耳に入った。


「センセーッ!」


ガラッと音楽室のドアが開くと、先生は振り返る。


「いた! 良かったー」

「どうした?」


何とも言えない虚しさに、あたしは動かずに先生の背中を見つめた。


背中越しに見えたのは、同学年の女子2人組。ウチの学校は上履きのラインが学年ごとに色違いだからすぐに分かる。


……見たことない顔。
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