世界を敵にまわしても
先生に会えない。
正しくは、2人で会える時間があるのか微妙。
いくら夏休みでも、いくら臨時講師でも。先生が休めるのはせいぜい1週間が限度らしい。
先生と仲直りらしいことをした日から2週間ほど経ったけど、いたって普通だ。
でもやっぱり、壁とか溝とかを感じてしまう。
……あぁ落ち込む。ダメだ、こんなんじゃ。
そう思うのに、どうすればいいか分からない。
もしかしたらあたしが気にしすぎてるだけで、勘違いだと思いたいくらい。
「浮かねぇ顔してやんの」
「……椿は楽しそうだね」
振り向いた椿は頬杖をつくあたしに口の端を上げた。
「朝寝坊出来るとか最高」
「普段から遅刻しまくってるじゃん」
「遅刻しようと思ってしてんじゃないし」
「寝坊しても焦らないくせに」
「急ぐとか無理」なんてどこまでもマイペースな事を言って、椿は鞄から鏡を取り出す。
足を組んでアイメイクを確認する椿を眺めながら、再び夏休みのことを考えると憂鬱になった。
「おふたりさーんっ」
椿から視線を外すと、先程までクラスメイトに囲まれていた晴が近付いて来る。