世界を敵にまわしても

「やっぱヒモだよな」

「紐? 何が?」

「こっちの話。帰んべ」


意味ありげな笑みを見せて、椿は腰を上げる。


あたしも続いて教室から出ると、お手洗いにでも行ってたのか前方からミキ達3人とはち合わせた。


「あ、帰るの~?」

「うん、帰るとこ」

「また文化祭準備でね!」


あぁ、そういえばそんな面倒な事もあったな。


「く、黒沢さんも、またねっ」


ミキが椿に話し掛けた事に驚いたのは、あたしだけじゃなくサトミとユイもだった。


「黒沢さんとか、ウケる」

「ちょっと椿……何でそこにいくかな」

「別に何でもいいけど。じゃーな」


そう言った椿が、微笑んだ。


先に歩き出した椿をミキ達は驚きの表情で見て、あたしは少なからず嬉しさが込み上げる。


「じゃあ、またね」

「あ、うんっ」

「バイバーイッ」

「じゃね」


椿の背中を追い掛けると、後ろからミキ達の騒がしい声が聞こえて可笑しくなった。


初めて向けられたであろう椿の笑顔に、騒ぐなと言う方が無理だ。

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