世界を敵にまわしても
世界の終わり
『え? 宿題終わったの?』
夏休みが始まって1週間以上が経ち、夜の9時過ぎ。
あたしはベッドに腰掛けながら先生と電話をしていた。
「終わったよ、全部」
『え? 本気で? 大丈夫?』
大丈夫って何よ、失礼だな。
「他にすることないし、文化祭準備期間に入ったら忙しくなるもん」
『はー……まぁ委員だしそうだろうけど、既に宿題終わったのなんて美月ぐらいだよ絶対』
ベッドに置かれた時計を見ると、他愛ない話は5分ほど続いてる。
でもきっと、そろそろ終わると思う。
「先生は? 相変わらず忙しいんでしょ?」
『自分でも、何でこんなにやることがあるのか教えてほしいよ』
少し笑いを含んだ声色でそう言う先生に、あたしも息使いで分かる程度に笑った。
「頑張って。ちゃんと休んでね」
『うん、ありがとう。週明けから文化祭の準備始まるから、その時に』
「……うん。じゃあ」
『ん、また電話するね。おやすみ』
「おやすみ」
先生が電話を切ったことを知らせた携帯を耳から離して、画面に表示されている通話時間を見つめる。
――6分49秒。