世界を敵にまわしても


「そろそろ鞭に変えようかと思うんだけど」


夏休みが始まって2度目の週明け、文化祭準備期間に入った。


軒下で看板作りをしていたあたしは、隣で寝転ぶ椿の視線を感じながらベニヤ板に下書きをする。


「何の話だよ」

「飴と鞭の期間の話」

「あぁ……。何、それにしてはしんどそうだけど」


“ハルくんのやきとり屋さん”という、どう見ても間抜けな下書きをしてからあたしはシャーペンを置いた。


「しんどいっていうか。別に急かしたいわけじゃないから、どうなのかなって」

「まぁ、聞きづらいもんではあるわな」

「ほじくり返すようなもんだしね」


溜め息を吐くと椿は相変わらず寝転んだまま、頬杖をつきながらあたしを見上げてくる。


見返すと、サイドにひとつ結びされた金髪が地面についていた。


「髪、汚れるよ。ていうか寝てないで手伝ってよ」

「そんなダサい看板作りたくねーし。誰だよハルくんって」


それは勿論、我が校きっての人気者のことじゃないの。


「つーか晴の名前入れなくても、全校生徒が知ってるだろ。何組かなんて」


「売上に繋がることはやっといたほうが賢明だとは思うけどね」

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