世界を敵にまわしても


ウチのクラスは看板の通り焼き鳥を売るらしい。


競争率の高い模擬店も売り場所も、委員同士でじゃんけんして晴が勝ったから即決定。


しかも最初に勝ったせいで、売り場所は1番人気の昇降口前のロータリー。


さすが特上ランクの人気者は、運まで良いのかと羨ましくなったくらい。


ロータリーは人が多くて目立つ場所だから、打ち上げ資金も出るとか何とか晴が言っていた。


「にしてもアチィ」


やっと体を起こした椿はあぐらをかいて、ポロシャツの胸元をぱたぱたと扇ぐ。


外で作業してる人も中で作業してる人も、ほぼ全員ジャージ姿。


みんな同じに見えるのに、やっぱり椿だけは一際目立つ。


「椿ってジャージも似合うよね」

「嬉しくねー」

「そっちどー? 進んでる?」


声に振り向くと、空き教室で作業してた晴が窓から身を乗り出していた。


ここにもジャージの似合う人がいたよ。


「って、ちょっと! 下書きしかしてねーじゃんっ」

「ほら、パス」

「せめてちょっとくらい色塗って!?」


ベニヤ板を差し出した椿に驚く晴は、困ったようにあたしへ視線を投げ掛ける。
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