世界を敵にまわしても


「そういえばもうすぐ試験の結果出るけど、手ごたえはどうなの?」


立ち上がった朝霧先生はどうぞと言うように、右のてのひらを上にして、指先を自分が座っていた椅子に向けた。


「……先生って冷え症なんですか」

「あれ、話噛み合ってないね」


椅子に腰掛けると、朝霧先生は自分の手を見つめた。


いつもしている、指先が出てる黒い手袋。冬なら分かるけど、少し疑問に思っていた。


「俺ね、凄い冷え症なんだ。夏場でもキッチリ布団被って寝るよ」


それはどうでもいいけど、「暑そうですね」と返しておく。


ていうか、何であたし座ったんだ。


急に居心地が悪くなって、あたしは鍵盤に視線を落とす。


「それで、今回も1位はとれそう?」

「……別に、獲っても意味ないから」


そして何で返事してるんだ。でも座って間もないのに帰ると言うのも、また素がどうとか言われそうで嫌だ。


「ふぅん? 家でも勉強してるの? 毎日?」

「……何でいつも質問攻めなんですか」


って言っても、話したのは昨日が初めてなんだけど。昨日からやたら質問されてる気がしてならない。


珍しくすぐに返答がこないから見上げると、バッチリと目が合った。


朝霧先生は考えるように顎へ手をそえて、首をひねる。


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