世界を敵にまわしても
「椿、優しいと思わない?」
そう伝えながら感動していると、外にひとり取り残された先生が、頰だけで笑った。
「高城にだけだよ」
「そうかな」
「俺のことは気に入らないみたいだけど」
……それは普段から何となく感じてたから、否定出来ない。
先生は辺りを軽く見渡して、「こっち来たら?」と何てことないように言う。
「上靴なんですけど」
「いいんじゃない? 黒沢も上靴のままだったし」
「そんな適当に……」
そう言いながらまぁいいかと思って、窓からではなく外への出入り口から先生の隣まで行った。
「どう? 文化祭の準備は」
「別に、いたって普通」
「……まぁ、遅れてないならいいんじゃないかな」
夏休みに学校で、周りに生徒が居る中で、他愛ない話をする。
放課後とは違うけれど、2週間ぶりの先生の隣は素直に嬉しかった。
「……先生」
「何でしょう」
「今度、ここの近くで夏祭りあるって知ってた?」
「あぁ、花火上がるやつだよね。去年もあったよ」
先生はあくまでもいち生徒と話すように、手に持っていた資料に目を通しながら会話をする。
それがあたしを寂しくさせるけど、仕方ないことだと思わなきゃいけない。