世界を敵にまわしても
「噂立てた人がその人とは限らない……」
「バカ言うなって。ここ最近で、朝霧と美月が一緒にいるとこ見た奴で、朝霧のこと狙ってそうな女がいたなら、ソイツだろーが」
混乱した頭で必死に考えて、浮かんだのはやっぱりあの2人組だけだった。
夏休みに入る前に音楽室に来た明るそうな子と、大人しそうな子。
「一昨日……先生と話してる時に5、6人くらいで見てきた子達がいて……その中の2人が夏休み入る前、放課後の音楽室に、先生に逢いに来てた子達で……」
「ソイツ等が噂立てた可能性、高すぎ」
「でも……っ! 1人は、先生のこと好きなんだろうなとは思ったけど……別に悪意とか、そういうの感じなかったし」
――頭が痛い。
体が震えて、怖くて、不安で、泣き出しそうだ。
「美月なら分かるだろーが。その朝霧を好きそうな奴じゃなくたって、ソイツの周りの誰かが悪意持ったら、あとは乗っかるだけなんだよ」
あぁ、分かる。
あの明るそうな子の方が、あたしに悪意を向けそう。
あたしが邪魔だとか、ムカつくとか思ったなら、そんな気持ちを誰かに言うのなんて簡単なことだ。
噂が立ってしまったら、それが広まる早さも、尾ひれがつくことも、あたしはよく分かってる。