世界を敵にまわしても


「何でだろう?」

「こっちの台詞ですよ!」


驚いて、つい口走ってしまった。


すると朝霧先生は「それもそうか」なんて他人事みたいに言って、思い付いたようにあたしを見下ろす。



「知りたいからかな」

「嘘くさい」


間髪入れず否定すると、案の定子供みたいに笑いだす朝霧先生。


あたしの何がそんなにこの人をご機嫌にさせるんだろう。


でも、もう慣れたというより呆れたに近い。朝霧先生には、怒るという行為自体ムダだとさえ思ってきた。


多分、適当に流した方がいい。


「はぁ……あ、呆れてるでしょ」


ひとしきり笑った朝霧先生は、また図星をついてくる。


「今日はもう怒んないんだね」

「無駄だと理解したんで」

「はは! 当たり」


何が当たりだ。

やっぱりちょっとイラッとくる、この人。


「んー。でもそうだな、少しくらい笑ってくれてもいいのに」

「はぁ、そうですか」

「笑顔が見たい」

「……」


反応しないでおこう。


面と向かってそんなこと言う人を初めて見たから反応出来ない、と言った方が正しいのかもしれないけど。



何だか胸の奥が、むずがゆい。


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