世界を敵にまわしても
――
――――…


ザワザワとした生徒達の声を聴きながら、あたしは椿と晴とステージ裏にいた。


体育館での後夜祭が終わり、生徒達はみんな花火を見るために校庭へ移動する。


「行った? 生徒も教師も体育館から出たべ?」

「んー……大体っ! 俺らも行こう」


携帯を握りしめて俯いていたあたしはポンと肩を叩かれて顔上げた。


晴は微笑んで、椿はただ見てくるだけで。あたしはゆっくり立ち上がる。


「俺は校庭で、椿は職員室と音楽室」

「美月は下駄箱の廊下で、職員玄関見てろ」

「分かった」

「んじゃ行くか!」


それぞれが歩き出して、先生を探しに行く。


晴と椿が見つけたら引き止めて、あたしが見つけたら椿に電話する。


生徒の全てが校庭に行く今、先生と話すにはチャンスだったから。


教師が校内を歩く確率は低いけど、先生に逢えたら晴が見張ってくれる。あたしのそばには椿がいてくれる。



「……ここでいいのかな」


下駄箱前の廊下。ちょうど真ん中あたりの壁に寄り掛かって、目の前の下駄箱とその先にある校庭へ集まる生徒たちを眺めた。


そしてすぐに、左側に目を凝らす。


廊下の先には、職員玄関と職員専用の下駄箱がある。


あたしは今からその一点を見ていなければいけない。
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