世界を敵にまわしても
……ここ数日で、先生を好きだった女子がどれだけいたか、あたしは知った。
人気者だったのは分かっていたけど、まさかそんなにいるとは思わなかったのも事実で、あたしのせいなのも事実だ。
でも、この人達だけには言われたくない。
「……何?」
「ちょと、何でウチらが睨まれなきゃいけないわけ!?」
噂が立たなければ、あたしは今頃先生と一緒にいられたのかもしれないのに。そんな考えが頭をよぎって、すぐに消えた。
……誰のせいでもない。これは、あたしと先生の問題なんだから。
恨まれていい。嫌がらせだって受ける。それに構ってられるほど、今のあたしに余裕はないんだ。
「はー……朝からよくやるわ」
「……おはよう椿」
あたしは立ち上がって、上靴に履き替えた椿と一緒に歩き出す。
「ちょっと! 話終わってな……」
あたしより先に振り向いた椿が、5人の中心に立つ女の子へと詰め寄った。
大人しそうな子をかばうように、最初に見た時明るいと思った子は椿を睨んでいる。
「アンタらさぁ、そーんなに朝霧が好きなら家調べてでも逢いに行けば? どーせそんなことしねぇんだろ?」
椿が今どんな顔をしてるのかあたしには見えないけど、女の子たちが固まるのは分かった。