世界を敵にまわしても
「それとも何? 密かに想ってるだけで、見てるだけで良かったとかぬかす気? それで朝霧が辞めたら美月のせい? 子供か」
「あたしたちはただ――…!」
「何だよ。朝霧だけが辞めたのが納得いかないって? アンタら朝霧が何で辞めたか知ってんの? あの噂が立ったせいで美月に迷惑掛けたから、それは自分の責任だって……」
「椿」
名前を呼ぶと、椿は口をつぐんであたしに振り替えった。
眉を寄せてまだ何か言いたげな顔をしていたけど、あたしが困ったように微笑むと溜め息をつく。
「美月が言い返さねぇからだろ」
「それは、ありがとう。でもいいんだよ。あたしのせいだって、間違ってないと思うし」
「フン。朝霧のどこがいいのか分かんね。あんなのよりいい男なんて山ほどいるべや」
彼女達に言ってるのか、あたしに言ってるのか。
踵を返した椿に聞くことはなく、並んで教室に向かった。
「あー。おはよぉ~。ねぇ、後ろ巻いてくんない? 寝坊しちゃってさぁ」
教室に入ると菊池さんが言いながらコードレスのコテを差し出してきて、椿はあからさまに舌打ちをする。