世界を敵にまわしても
――
――――…


……当たり前か。

先生はもう先生じゃなくて、だから先生って呼んだら変で……。


昨日から何回同じことを考えてるんだ、あたしは。


「あ、おねーちゃん! おはよー」


玄関でローファーを履こうと座ったままだったあたしの背後から、那月の声が聞こえて振り向いた。


「いってらっしゃーいっ」


あたしの妹ながら、なんて無邪気な笑顔。


本当に血が繋がってるのかさえ疑問に思う。少し、癒されたけど。


「いってきます」


そう笑顔で返して、あたしは立ち上がった。


玄関のドアを開けて外に出ると、秋晴れの空が拡がっている。


まだ肌寒くはないけれど、朝はブレザーを羽織るくらいがちょうどいい。


「……」


家の敷地を出て左に曲がり、数歩で足を止めた。


あたしは首を傾げながら後ろを振り向き、一瞬見えたような人影を今度はハッキリ捉える。


「晴!?」

「お、おはよ」

「いや、おはよう……って、何してんの!?」


家を囲む塀の前に座っていた晴は、気まずそうな顔をして立ち上がった。


「た、たまたま、通りかかった?」

「嘘が下手すぎるんだけど」


そう言うと晴は困ったように笑って、あたしは戸惑いを隠せない。


朝から一体、あたしの家の前で何をしてるんだろう。
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