世界を敵にまわしても
「何してんの? 何であたしの家の前にいるっていうか、何で家知ってるの?」
近付いて来る晴にこれでもかとばかりに質問して、晴はズボンのポケットに手を突っ込む。
「いやー……ちょっと、まぁ、昨日どうだったか気になって」
「……それだけ?」
「それだけ!?」
ショックを受ける晴と、対応に困るあたしはどちらからともなく歩き出す。
一緒に登校するなんて、変な感じだ。
「え、ほんとにそれだけの為に朝から?」
「だって! 学校じゃ落ち着いて話せねーじゃん!」
それは、そうだけど……別に放課後でも良くない?
あ、でも晴のおかげで零さんに会えたんだもんな。
「そっか、ゴメン。気にかけてくれてたんだね」
「や、別にそんな改まれると……」
言いながら晴はチラチラとあたしを見てくる。
不思議に思って首を傾げると、晴は慌てて「何でもない!」と顔を逸らした。と思ったら、またあたしに視線を向けてくる。
「やっぱ……顔色良くないな」
「え?」
「零さんて、キツイだろ。色んな意味で刺々しいっていうか。それで、美月大丈夫かなって昨日ずっと思ってて……」
晴は少し大きめなカーディガンの裾を引っ張って、あたしの顔を見ずに言う。
……そうか。
昨日のことっていうより、あたし自身が心配されたのか。