世界を敵にまわしても
「大丈夫なのに。……迎えに来てくれたんだね」
「また倒れられちゃ困るしな」
「ありがとう。でも大丈夫だよ。朝ご飯も食べたし」
ちょっとだけど、また貧血起こして倒れない程度には食べてる。
「もう俺、ほんと美月が登校中倒れたらどうしようかと……」
「あは! そこまで心配してくれたの?」
クスクス笑うあたしに晴は「だってさー」と、まだ不安げな顔をしていた。
「……で、昨日どうだった? 奏ちゃんの居場所とか……」
駅まであと半分ほどの道のりを歩くと、晴が少し聞きづらそうにあたしを見る。
「聞き出せなかった」
そう。結局何も聞き出せなくて、零さんが帰って数分経ってからあたしも店を出たんだ。
飲み物も、一口も食べなかった食事の料金も、零さんが払っていた。
「先生がどこにいるかは知ってるけど、教えられないって。……逢ってるみたい。先生と、零さん」
……あぁ、まただ。息苦しくて、冷や汗まで出そう。
昨日だって、零さんと会う前は緊張なんて一切しなかったのに、帰りは胸がギュウギュウと痛んで、鼓動が速くなった。
「……ヨリ戻すみたいなこと言ってて」
きっとそれが、あたしは怖かったんだ。昨日の帰りも、今も。
考えるだけで苦しくて泣きそうで、それでも必死に頭から振り払った。