世界を敵にまわしても


「泣かないから……大丈夫だよ、晴」


だから、晴がそんな辛そうな顔をしなくてもいい。


「教えてくれて、ありがとう」


涙が浮かんだもの、それを我慢してるのも、晴のせいじゃないんだよ。


だけど後から後から涙が浮かんで、我慢すればするほど今先生は零さんと居るのかなとか、笑ってるのかなとか考えてしまう。


もう涙を湛えきれなくなって、あたしは慌てて晴に掴まれてない方の手で涙を拭った。


「……ゴメン美月」


左右に緩く首を振って、あたしは止まらない涙をどうにか見せないようにする。


「泣かせるかもって、分かってたのに」

「いい……大丈夫……晴のせいじゃない」


あたしを心配してくれたのも本当で、昨日のことを聞きに来たのも本当で。


先生と零さんが一緒に住んでることを、1番言いたかったでしょう?


「ほんとに、大丈夫だから……まだ、頑張れ……っ!?」


ガッと突然肩を掴まれて、あたしは驚きから泣き顔のまま晴を見てしまった。


「ぶ! ちょ……な、晴……っ」


肩を掴んだかと思えば、今度は掌まで引っ張ったカーディガンの裾であたしの涙を拭う晴。


されるがままに数秒経ち、晴はあたしの涙が乾いたことを確認する。
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