世界を敵にまわしても
「えと……あの、ありがとう?」
驚き過ぎて、涙が止まってしまった。
あんまり強く擦るから少し肌がヒリヒリするけど、そこは我慢しようと思う。
「……俺、美月には笑っててほしんだよね」
生地で吸いきれなかった涙を手で拭ってると、晴は真面目な顔でそう言った。
……そういえば、晴には前もティッシュで拭いてもらったな。
保健室で、泣いちゃった時。
「しんどくない?」
あたしよりわずかに身長が高い晴は、本当にいつも優しい。誰に対しても、分け隔てなく平等に。
その無償の優しさは、きっとたくさんの人に元気を与えたんだろうなと思う。
「晴、ありがとう。ほんとに大丈夫だから、気にしないで」
「そうじゃなくてっ!」
「……そうじゃなくて?」
「あー、だからっ! えっと……違くて、って何言ってんだ俺!」
晴はガシガシと頭を掻いて、あたしは意味が分からず言葉を掛けるのも迷う。
しんどくないって聞くから、大丈夫って答えたんだけど……大丈夫じゃないだろってこと?
いや、でも椿に相談してからまた色々考えようって思ったから……。
「あ、晴にもちゃんと相談するから」
「ぎゃー! 違う! そっちじゃない!」
そっちってどっちだ。
ていうか晴、顔がやけに赤いんだけど……あたし何かした?