世界を敵にまわしても
「アイツは? どうすんの? てかどうなったわけ? 昨日」
「あぁ……昨日は……」
晴に突然の告白を受けて混乱していた。
あたしは一旦晴の話を置いて、昨日零さんと話したことを伝える。
最後に晴から聞いた、先生と零さんが今一緒に住んでることを話終わると、椿はグシャッと紙パックを握りつぶした。
あたしはそれに驚いて、椿の手でただの紙の塊になったものを見つめる。
「んじゃまぁ、殴りこみ決定で」
「どういう流れで!?」
更に驚いて椿を見上げると、既に携帯を取り出して電話を掛けていた。
「あーもしもし? 告ったんだってなー」
「つば……!」
ニヤニヤと笑う椿は、電話越しでさわぐ晴をからかって楽しんでるようだ。
すると椿は一変、真面目な顔をして晴に告げた。
「あんたは後回し。どーせ零ってやつの家も知ってんだろ?」
ビクッとあたしが肩を跳ねさせると、椿は握りつぶした紙パックを見ながら晴に相槌をうつ。
「ふーん。分かった……あん? 後で報告するっつーの。んー、じゃ」
椿は電話を切って携帯を閉じると、あたしに視線を移す。
試すような、問うような視線。
「今日、零ってやつの家行く?」
「……」
場所は、分かってるらしい。
そこに、先生がいるのも知ってる。
迷ったのは一瞬で、選択肢はひとつだった。
――先生に、逢いに行く。
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