世界を敵にまわしても
「あー……オートロックかよ、めんどくせぇー」
「あ」
そうか、当たり前だ。今時、簡単に入居者でもない人が入れるわけがない。
しかも、こんな高そうなマンション。セキリュティだってしっかりしてるはずだ。
「部屋の番号分かってるの?」
「分かってる」
椿は言いながら、0から9まで並んだ数字を押していく。
しばらくすると、「どちらさま?」と零さんの声が聞こえた。
「朝霧に変わって。黒沢って言えば分かるし、会いたくねーってんならこっちも色々手段考えてっからって……伝えろ」
『……随分乱暴な口を聞く子がいるものね。1人?』
「2人。考えりゃ分かんだろ」
『あぁ……隅っこに映ってる子、美月ちゃんね。いいわよ、入って。フロントの人にも言っておくから』
プツッと音が切れて、あたしと椿は顔を見合わせる。
こんなにアッサリ入れるなんて……。
「会わせないとか言われるかと思った」
「ウチも」
というか、本当に先生がいるんだ……零さんの家に。
「行くぞ」
落ち込みそうになるあたしを引っ張り上げるように、椿はあたしの手を掴んでマンションの中へ入った。