世界を敵にまわしても


「好き」


それでも。ありがとうと言われても、何で来たのって言われても。


「好きだよ、先生」


あたしが好きだと言うのは貴重だから嬉しいって、言ったくせに。


何で、喜んでくれないの。


何で今ここで、悲しそうな表情をするの。


「先生……何で零さんの家にいるの……?」


もうあたしに好きと言われても、嬉しくない?


零さんに言われた方が、嬉しいの?


「先生……メール、ちゃんと読んでくれた?」

「……、……」


口を開きかけた先生は、やっぱりすぐに言葉を飲み込んでしまう。


「……そろそろ帰ってくれる? ソウね、疲れてるの」


急にあたしの肩を掴んだ零さんに視線を移す。その一瞬の間に、先生が背中を向けたのが分かった。


見ると、先生は靴を脱いで玄関に上がっていく。


「待って……先生っ!」


追い掛けようとしても、零さんがあたしの肩を押し返す。


「大丈夫、アタシが代わりに優しくしてあげるから」

「ヤダ! 先生っ! あたしと話して! もっと……ちゃんと向き合ってくれきゃ分かんない!」


言葉が聞きたいだけなの。
先生の、気持ちを聞きたいだけ。


先生は教師を辞めてどうしたいの?この先どうなりたいの?


「あたしじゃなくて、零さんといたいの……っ!?」



今、誰を想ってるの……ねぇ、先生。
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