世界を敵にまわしても
エモーション
「あ、美月に椿!」
椿と廊下を歩いていると、晴が後ろから声を掛けて来る。
あたしは内心ドキッとして、顔に出ないように振り向いた。
「おはよう晴」
「はよー!」
相変わらず、何の曇りもない眩しい笑顔。晴は周りを歩いていた友達にも挨拶をして、あたしと椿から遠ざかっていく。
「……何だアイツ。やる気あんのか、やる気」
椿が晴の背中を見て言うけど、あたしは何のことか分かっていながらもあえて突っ込まない。
「なぁ、なくね?」
「あたしに聞かないで!」
「何ソレ。つまんな」
つまんないとかつまるとかそういう問題じゃない!
あたしは小さく溜め息をついて、騒ぎながら階段を上っていく晴の横顔を盗み見た。
――晴から告白されて、1週間が経っていたけど特に変わったことはない。
お互いギクシャクしたのは告白された日だけで、次の日は普段と何ら変わりはなかった。
告白されたこと自体、夢だったんじゃないかと思うくらい普通なんだけど、ふとした瞬間に好かれてると分かってしまう。