世界を敵にまわしても
「ねーねー! 今年も朝霧先生が居てくれてラッキーだと思わない?」
――出た。
目の前に音楽室が見えたとこでユイが言いだし、あたしは歩く速度をわずかに速める。
「思うー。むしろミキ達が卒業するまで居てほしいなぁ」
「え。2人とも朝霧派なの? あたし晴派」
美月は?なんて聞かれる前に音楽室に脚を踏み入れると、ザワザワと騒がしい空気が会話を遮断してくれた。
「あ、やっぱりまだ朝霧来てないね~」
「だね」
ミキに微笑むと、サトミとユイが「席どこだっけ」と話している。
音楽室全体を眺めると、自分の席の近くで話してる子や、座らず自分のグループで集まって話してる子も居た。
「あー、自由席にしてくんないかな。前の席の子座んないと自分の席分かんないし」
「その内覚えるよ」
サトミにそう言いながら、心の中で出席番号順で良かったと思う。
自由に座れなんて言われたら、当たり前に個々のグループで固まるに決まってる。それはあたしも例外じゃない。
休み時間だけでいっぱい一杯なんだから、授業中のコソコソ話にまで付き合わされるなんて避けたいのが本音だ。
そんな事を思っていると、本鈴が校舎に響き渡る。
先生が来る前に席へ着くクラスメイト達を見ながら、あたし達も自分の席へと移動した。