世界を敵にまわしても
「イッテーな! 教科書だけ貸せ!」
「お前ふざんけんなっ! 美月にまで迷惑かけんじゃねーっ」
「……や、あたしは別に」
「ほら! いいって言ってんだろーが!」
ギャーギャー騒ぐ晴とヨッシーを止めようとしたけれど、すぐほっとくことにした。
結局椿が「ウルセー!」って言って晴の頭を叩くと、ヨッシーはあたしのワークと晴の教科書を持って逃げていった。
「もーっ! ヨッシーの奴! 何かごめんなー美月」
「や、ワークぐらい別にいいよ」
「迷惑だったらマジで言っていいから!」
「う、うん。晴、頭痛くないの? 大丈夫?」
「あぁ! そうだよ椿! お前殴ることねーだろー!?」
「叩いただけだし」
今度は晴と椿が騒ぎだして、あたしはその隙にホッと一息つく。
……何だかなぁ。
特別な会話をしてるわけじゃないのに、今までと変わらない会話をしてるはずなのに。
言葉の節々に好意を感じるっていうか……自意識過剰なのかもしれないけど。
晴に、好かれてるんだと感じる。
あたしはそれが堪らなく恥ずかしくて、くすぐったかった。