世界を敵にまわしても
――あの曲だった。
先生が作った、あたしが文化祭で歌った、あの楽譜の曲。
全然、違った。
静かな始まり思いのほか高い音で、流れるように、追いかけるように、後から後から色んな音が出て来て。
上がったり、下がったり。早くなったり、遅くなったり。
晴が弾いてくれた時と同じ曲のはずなのに、激しさが違った。
泣いてるんじゃない。
泣くより、もっと。声を上げて号泣するより、もっと。
悲しくて、苦しくて、身が裂けそうなほど痛みが走る。
慟哭という言葉がピッタリだと思った。そんな想いを、知ってると思った。
……先生が、ピアノを弾いてる。
パッと音が消えて、すぐにまた弾いて。弾むように軽く、楽しげかと思えば、落ち込んだように音が重くなる。
苦しい。楽しい。ツラい。嬉しい。悲しい。胸いっぱいに感情が溢れて、うまくいかない、たくさんの出来事が頭をよぎる。
あたしの目に涙が浮かんですぐに、先生は曲の早さや激しさを体中で表現した。
先生の両手がフワッと、鍵盤から宙に浮く。