世界を敵にまわしても

世界を敵にまわしても

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――――…


11月上旬。

暦の上では季節を冬に分けられるけれど、まだそんなに寒くはない。


カーディガンにブレザーを羽織れば、十分な防寒になる。


「美月。こっちとこっち、どっちがいいと思う?」


教室で過ごす休み時間、椿は冬服の新作に夢中で、雑誌を広げてはウンウン悩んでいた。


「ファー付いてる方が似合うと思う」

「だよなーっ! でも金がねぇから却下」


じゃあ聞かないでほしかった。


そう思いながら教室の生温い空気に欠伸をすると、晴の声。


「なーなーっ! 今週ライブあんだけどさっ、良かったら来て!」


言いながら晴はあたしと椿のチケットを差し出してくる。あたしはそれを1枚受け取って、眺めた。


「土曜の夜?」

「そうそうっ! 大トリだから絶対来いよー!?」


チケットを眺めても晴のバンドの名前しか知らないので机の上に置くと、既に晴は教室を出てチケットをさばきに行ってしまった。


「……ていうかいつもタダだけど、いいのかな」

「さー。いんじゃね? ウチらは別格ってことで」


そういうもんなの?


あたしはチケットをもう一度見てから、雑誌を読む椿に視線を移す。


「……ねぇ椿」

「あー?」


ずっと、聞きたいことがあったんだけど。聞いても怒らないよね?


雑誌から目を離さない移さない椿に、あたしはゴクリと生唾を飲み込む。


「椿って、好きな人とかいないの?」
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