世界を敵にまわしても


「晴じゃん」


間髪入れずに答えた椿に、あたしは驚くを通り越して固まってしまった。


……ハ、ル……?


晴じゃんって、晴?



「っええぇぇえええ!?」


きっとあたしの人生で1番の叫び声は、教室中に響く。椿は耳を抑えて、眉を寄せながらあたしを睨んだ。


「ウッセーな! 何だよいきなり!」

「何だよじゃないでしょ!?」

「はん? 気付かねー美月がどうかしてんだろっ。ニブすぎ」


ていうか、待ってよ! 本気で言ってる!? あたしが鈍いだけなの!?


「……ほんと? いつから?」

「去年の冬」

「言ってよ!!」

「言ったべや、今」


そういうことじゃないんですけど!


盛大な溜め息をつくと、椿は雑誌を閉じてあたしを見つめた。今日はヘーゼルのカラコンで、猫みたいに思える。


「てか、聞かれなかったから言わなかっただけで、隠してたわけじゃねーし」


あぁ、何て椿っぽい考え方なの……。


あたしは机に頬杖をついて、椿の頭の中がどうなってるのか考える。


そもそも、晴があたしのこと好きだったのも知ってたし、晴のこと応援……してないな。


でも椿のことだから、あたしが晴を好きにならないって分かっててもおかしくないよね。
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