世界を敵にまわしても
「ただい……」
家に帰ると、リビングから怒鳴り声のようなものが聞こえた。
見ると、明らかに兄のではない革靴が無造作に脱ぎ捨てられている。
……お父さん?
恐る恐る廊下を進むと、やっぱり両親が喧嘩しているようだった。
「……何ですか今更! 仕事仕事で家に居ない人にあれこれ指図される覚えはありませんっ!」
「じゃあお前は自分が正しいと言うのか!?」
「那月は今が大事な時期なんですっ! 美月にかまってる暇なんてないことぐらい分かるでしょう!?」
ズシッと急に体が重くなって、家に帰るまでの足取りが軽かったことに気付く。
あたしの話……だよね?
「美月だけの話じゃない。那月はまだ6年生だろうっ。遊ぶ時間も与えず勉強させて、それで立派な母親きどりか!」
「那月は美月とは違いますっ! あの子みたいに失敗なんかしません!」
「それはお前の勝手な都合だ! 自分の失敗を那月で挽回したいだけじゃないか!」
「美月がああなったのが、あたしのせいだって言いたいんですか!?」
……やっぱり今日は変な日だ。
あたしがちゃんと出来てたら、こんな喧嘩もなかったんだろうな。