世界を敵にまわしても


「黒沢はとりあえず保留で、次ー……高城」

「はい」


返事をすると目が合い、朝霧先生はすぐに出席簿に視線を落とした。


「……」


名前を呼んで返事があったら顔を確認して、出席簿に丸を付ける。


繰り返し行われるその動作を最後まで見たけど、あたしが思ったことはやっぱりカッコイイではなかった。


ちょっと前髪が長すぎると思う。その点だけ。



「じゃあ始めようか。パートリーダーはCDラジカセ取りに来て」


……嫌な授業内容だったのを忘れてた。


合唱なんて、しかもパートごとに分かれるなんて、ほとんど自由時間のようなもの。


音楽室内に存在する準備室のドアを開けた朝霧先生をうとんでも仕方ないけど、溜め息もつきたくなる。


ハァ、と諦めにも似た溜め息をつくと、突然準備室からギィィーーンというノイズが響いた。


「え? 何? ギター?」


周りの生徒が騒ぎだすと同時に、「宮本っ!」という朝霧先生の声。


……あぁ、彼か。


「ははっ! ちょっといじっただけじゃんか~」


そう言いながら準備室から出てきたのは、宮本 晴(みやもと はる)。


高2の男子にしては小柄な方で、それに比例するように小さい顔は女の子みたい。


というより、傷み知らずの赤茶の髪と黒目がちの大きな瞳が、愛くるしさを引き立てている。


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