世界を敵にまわしても
「1年生の時からずっと変わらず1位を取るなんて、職員の中でも評価が凄く高いんですよ。ここだけの話、うちも一応進学校ですから、美月さんのおかげで偏差値上がりそうです」
そんな馬鹿な話があるか。
でっち上げもいいとこだ。
教育ママがいかにも喜びそうな言葉を並べて……何がしたいの。
「お母さまの教育が良いんですね。さぞご自慢の娘さんでしょう」
「え、えぇ……まぁ」
地面に落としていた視線を上げられずにいると、「では、私はこれで失礼します」という先生の声。
――待って。
聞きたい事が、言いたい事が、山ほどある。
「高城」
瞼を更に強くつむって、意を決したように顔を上げた。
「また明日」
前髪を分けた先生の顔はいつも以上にハッキリと見えて、変わらない笑みがあたしの胸を強く強く締め付ける。
結局あたしは何も言えないまま、母に頭を下げてから帰っていく先生の背中を見送る事しか出来なかった。
それが見えなくなるとジワッと涙が浮かんで、あたしは慌てて玄関から遠ざかろうとする。
だけど廊下に上がったところでお父さんに肩を掴まれて、あたしは足を止めた。