世界を敵にまわしても
……結果を出したって、意味のないものだと思ってた。あたし自身が無駄で、価値のないものだと思ってた。
知ってもらうことが、褒められることが、こんなに嬉しいなんて。
両手で顔を覆うと、控えめで小さな足音があたしの元へ駆け寄ってきた。
「お、おねーちゃん……っどうしたの? 泣いてるの?」
「……那月、見てみなさい。お姉ちゃんのテストの結果だよ」
「…………わ! お、おおおにーちゃん! おねーちゃんの点数凄いよ! 那月、こんな数字見たことないっ」
「……ほんとだ。俺も見たことないよ」
「おねーちゃん、すっごい頭いいんだね! ……でも何で泣いてるの? うれし泣き?」
ズッと鼻を啜ると、あたしは涙を拭ってから那月の目線に合わせて腰を下ろした。
「そう、嬉し泣き」
「なんだぁ。良かった! 那月もね、いい点数取ると嬉しいよ!」
「……そう。勉強楽しい?」
「うーん、ふつう」
思わず吹き出しそうになったのを、咄嗟に俯いて堪えた。
「でもおにーちゃんに教えてもらうのは、好きだよっ」
「……そっか」
変なの。
あたしの後ろで、那月に関してうるさかった母が何も言ってこないなんて。
お父さんも兄も、ただ黙ってあたしと那月の会話を見ている。
やっぱり変だ。
こんな光景、いつぶりだろう。
「……まだ涙止まんないの? 那月のハンカチ貸してあげる?」
「ううん……持ってるから、大丈夫」
そう言ってブレザーのポケットから水色のハンカチを取り出すと、「かわいくない!」と驚かれてしまった。