世界を敵にまわしても
ボーダーライン
あたしは多分、やっぱり傍から見たら真面目なんだと思う。
あれを見ちゃいけないよ。
これは食べちゃいけないよ。
例えばそう言われとして、あたしは分かりましたと頷くだろう。
何の疑問も持たずに、言われるがまま。
だけど本当はきっと、疑問を持たないんじゃなくて、どうでもいいから頷けるのかもしれない。
『2人を別つこの線から、決して出てはいけないよ』
――あたしは黙って、頷けるだろうか。
「はい、おはよー」
もうすぐ4月が終わろうとする頃。朝のホームルームに現れた人物に、クラス全体がざわめいた。
「えっ! 何で奏ちゃん!?」
いの1番に口を開いたのは晴で、それに続くように色んな声が教室に拡がる。
「うっそ! 何で何でっ!?」
「おはよー先生―っ」
「担任は? また病欠かアイツ!」
いつもならダラダラと1日の学校生活を始める時間が、今日は180度違った。
「とりあえず出席取らせてほしいかな」
生き生きとした明るさと空気に微笑むのは音楽の臨時講師であり、人気者。
……昨日の今日で、まさか朝から会えるとは思わなかった。