世界を敵にまわしても


予鈴が鳴ってもあたし達は教室の後ろの方で、晴たちは前の方でお喋りに徹する。


晴たちの会話の内容は聞こえないから分からないけれど、ミキ達の会話と大差ないだろう。


……にしても長い。


45分も昼休みは必要ないと思うよ、あたし的に。


「次って……うわ、数Ⅱだっけ?」

「嫌だぁ〜」


ほぼ全員当てられるもんね、数学の授業。


パックジュースを吸い上げていると、ユイが溜め息をついた。


「ラストが体育なのもどうかと思うよ」


「疲れるよね」とあたしが付け足すと、文化部のミキが首を上下に振る。


「部活前に疲れたくないぃ〜」


サトミとユイは運動部だけど、同じ気持ちだと顔に書いてあった。


飲み干したパックジュースにストローを押し込んで、あたしは席を立つ。


「サトミ、ゴミ」

「あー、ありがとっ」


サトミのゴミを受け取り、教室の端にあるゴミ箱に捨てに行こうとすると、ガタガタッと大きくも小さくもない音が耳に届いた。


ゴミを捨てて振り返ると、誰かの机に手をつく金と赤の髪をした人物が目に入る。


……黒沢さん?


つまずいたのかと思ったけど、俯く黒沢さんの傍に立つAランクの女子の表情から、そうではないと分かった。
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