おい、早く起きろ【花集】
夏だというのに、帰り道は肌寒く感じた。
バックを地面に引きずりながら、ぼんやり空を眺めた。
ピピピピ。ピピピピ。
突然バックの中から電子音が聞こえた。
景子の奴め。
今頃掛けてきやがって。
僕は携帯を取り出して電話に出た。
『もしもし。景子か? 遅いんだよ。花火大会終わっちまったぞ』
『もしもし? あの、7時ごろにそちらから留守番電話にメッセージがあったので掛け直した日笠というものですが。おたく掛け間違えてますよ』
『お前はいっつもそうだ。反省が足りない』
『いえ。ですから、私は景子さんではないです。間違えてますよ』
『こっちは一大決心して待ってたんだぞ。馬鹿みたいじゃないか』
『いや、ですから私は景子さんでは・・・』
『はぁ? お前何言ってんだ? さてはお前寝ぼけてるな。』
僕は声を荒げて言ってやった。
『おい、景子。早く起きろ』
END