1ページの沈黙
憎たらしい目。
無理やり眼鏡を外そうとすると、ぺしりと手を叩かれた。
でも知ってる。
その瞳が、ムカつくほど綺麗ってことを。
スタイルも、顔も人並みなのに、あたしを見るその瞳は最高級品。
ぎらぎらと輝いて、あたしを捕えて離さない。
「眼鏡とって」
「無理」
「なんで。見たい」
「嫌」
そこまで拒否しなくたっていいじゃないか。
あたしは手にしていたクッションを波多野に投げた。
ぽすっと音がして、いとも簡単に受け止められる。
それがむかついて、あたしは波多野との距離を詰める。
「波多野ってどんな女の子がタイプなの」
相変わらず難しそうな本を片手に、波多野は煙草をふかしていた。
この研究室に入り浸るようになってから、あたしはこの匂いを覚えてしまった。
波多野はここか、講義の教室くらいにしか訪れない。
あたしの国文科からはちょっと遠いけど、慣れてしまった。
「…背の低い子かな」
ぼそりと呟いた波多野を睨む。
「それはあたしに喧嘩売ってんの」
「ちげえよ。普通に」
そうは言うが、あたしの身長はお世辞でも小さいとは言えない。
辛うじて波多野は越えていないが、女としては高いほうだ。
「気にしてんのに。波多野のバカ」
「だから違うって言ってんだろ」
珍しく波多野が本から顔を上げた。
ばちりと視線があう。
「じゃあ、キスして。波多野」