1ページの沈黙
ねえ、なんで不機嫌だったのよ?
アンタ、あたしなんかどうでもいいはずでしょう?
あたしが男の人と遊ぶのなんか、なんとも思わないでしょう?
なんでよ。
やめてよ。
「波多野……」
「なに」
「キスして」
期待するじゃん。
あたしは波多野の手を両手で包んで、優しく退けた。
そのままヤツの首に手をまわす。
綺麗な綺麗な瞳が、あたしを見ていた。
ぞくり。
あたしはその芳香に、酔わされる。
「してよ、キス…」
そう言うと、珍しく波多野からキスをしてくれた。
ちゅ、とリップ音だけしてすぐに離れてしまったけど。
「足りない」
あたしはそう呟いて、熱い唇に噛み付くようにキスをする。
足りない。
足りないよ。
もっと欲しい。
「んっ…」
いつもより強引に舌を入れると、波多野もそれに応えてくれた。
いつも消極的な波多野の舌が、うねるようにあたしをかき乱す。
漏れた吐息はお互いの熱で、憂いを帯びる。
もっと。
もっと。
そう思う自分と、
やめて。
拒んで。
そう願う自分がいて、あたしの頭はぐちゃぐちゃだった。
波多野から与えられる熱に浮かされる。
いとしいよ。
とっても。
このキスがいつまでも続けばいいに。
ああ、波多野。
アンタが愛しくてたまらない。
アンタが、憎くてたまらない。
「…殺してやりたい」
「リカ…?」
「殺してやりたいくらい、好きよ。波多野」
あたしはもう一度波多野の唇に噛み付いた。