1ページの沈黙
理央は穏やかで優しかった。
あたしとは違って真面目で、本当にいい子で。
小さい頃はずっと理央にくっついて遊んでた。
でも、高校に入ってから、一つ上の理央と過ごす時間は極端に少なくなった。
同じ学校だったのに、ほとんど話をしなかった。
それもそのはず。
理央は日陰で生きるような女だった。
こつこつと積み重ねて、慎ましく、それでも幸せと平凡を愛するような。
あたしの姉なのに、彼女の容姿は凡人並み。
昔から、理央にとってあたしは比べられる存在だった。
劣等感も、あったと思う。
そのせいなのか、理央は全く目立たなかった。
あたしも対して気にしなかったし、理央だってあたしに関わろうとはしなかった。
そういうわけで、あたしは理央のことなんか忘れて青春というものを謳歌したのだ。
遊ぶだけ遊んで、男をつくっては捨てつくっては捨ての繰り返し。
もともと勉強はできるほうではあったので、卒業も進学も苦労はしなかった。
そうだ。
あたしの人生で苦労したことなんて、波多野以外にないかもしれない。