1ページの沈黙
息の上がったあたし。
それを一瞥して、一言。
「甘い」
あ、そうだった。
あたしさっきまで飴を舐めていた。
コイツ、甘いの嫌いだった。
もう、キスする前に甘いの食べるのはやめよう。
それから何事もなかったかのように、本に視線を戻す波多野。
ああ、もう。
もう。
あたしの時間は終わりかよ。
むかつく。
なんで、コイツはあたしに欲情しないの。
しろよ、男ならさ。
あたしは不貞腐れて、波多野から離れた。
それを見ようともしないから、余計むかつく。
嫌な男。
ブーツに無理やり足を入れて、勢いよくチャックを締める。
そばにあったバックやジャケットをとって、出口に向かった。
「波多野のバカ!!」
そう捨て台詞を吐いて、あたしは乱暴に研究室のドアを閉めた。
むかつく。
むかつくむかつくむかつく。
ねえ、波多野。
あたしはアンタが欲しいんだって。
ちょうだいよ。
何もかも。