[短]ハロウィンの夜に
「じゃあね、また後で!」
皆は先に会場入りする。私は後からまだ誰かもわからない魔界の王子と入場する。魔界の王子にエスコートされながら。
「ふぅー…」
大きく深呼吸した私は更衣室を出て、魔界の王子との待ち合わせ場所(といわれた場所)に行った。
あまり期待するな……
もし、拓兎じゃなかった時にどれほど落ち込むか…
私は重い足をゆっくり…ゆっくりと前へ出した。
「君が、魔界の姫??」
その声を聞いたとき、私は絶望感に満ちていた。この声は拓兎じゃない。
今…ここに残っているのは魔界の姫、王子、進行役の生徒会1名だけ。
しかもここで進行役をするのは女子だと聞いていた。
つまり…どう考えても今の声の主が魔界の王子なのだ。
やっぱり…無理だよね…
このハロウィンパーティーは開催されて31年。
その中で好きな人がペアだったのは2回だけなんだから。
私は顔を上げた。
やっぱりそこには拓兎じゃない人がいて、私はテンションが下がる一方だった。