[短]ハロウィンの夜に
4分ほどで着替えてきた二人。
拓兎の王子はヤバいほどかっこよかった。
野球部だけど少し長めの髪は、短時間でやったとは思えないほどきれいにワックスで固められていた。
背もあるし…私のなかの正に王子だ。
一方、もう一人はヴァンパイア。
入場のときは、恐らく私たちの配下の者のように入場するだろう。
「じゃあ今度こそ!」
「………遥、行こうか」
「うん」
拓兎に握られた手は凄く熱を帯びていた。きっと顔は真っ赤だ。
「では!魔界の王子と魔界の姫の登場です!」
中から人の声がして、そのあとすぐに、生徒会役員が扉をバッと開けた。
私は拓兎にエスコートされながら、私たちのために開かれた道を歩いていく。
幸せ…
壇上に上がった私たちはお互いに少し離れ、お辞儀をする。
王子は私の手をとり、手の甲にキスをした。
!!
ヤバい…!いま、絶対に顔が赤い…
「姫、僕と踊っていただけますか??」
「はい、喜んで」
これは決められた台詞。私は皆がダンスのレッスンをしているあいだ、この流れの指導を受けていた。