CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
『それからは毎日花束持って出待ちしたり、英語で書いたファンレター送ったりして……

遂にはママが住んでいるコンドミニアムを見つけて、ママが仕事から帰って来たところを待ち伏せしたりして、もう殆どストーカー状態だったんだって。』


「パパさん、危ない人みたいだねぇ!」


『そうなのよ!

ところがね、ある日ママが歌手としてデビューして、PV作る為にバギオって所までマネージャーと撮影クルーと一緒に出掛けた時に事件が起きたんだって。』


「一体何があったの?」


『バギオってフィリピン北部の山間部なんだけど…、ちょうど雨期の時期に入っていて、凄いスコールが何時間も続いたんだって。

それでね、ママが乗ってた移動用の車がスリップして3m下の崖に転落したの。』

「エェ~ッ!?」


『その時に、後ろから着いていったストーカー紛いのパパが車から降りて、すぐに崖下に飛び降りてママを助けたの。

ママは頭から血を流していて、右手と左足を骨折していたんだけど、パパがママを背負って崖を登って自分の車にママとマネージャーを乗せて病院に向かったの。

でもね、頭自体には異常は無かったみたいなんだけど、出血がかなり酷くショック状態になりかけていたんだって。

たまたま同じ血液型だったパパが、輸血用の血液が届くまで、ずっとママに血を分けてあげてたの。』

「パパさんの愛なんだね。」

『ママの顔色が真っ青から段々赤みがさしてきたころ、パパの顔色が真っ青になってしまったってドクターが慌て輸血をストップしたって話よ。』

「パパさんの血を貰ったママさんは助かって良かったねぇ!」

『それからはもう大変だったんだよ。

パパとママの両方に輸血したって言ってた。』

その後回復したママさんがパパさんのプロポーズを受け入れて、晴れて結婚式をマニラの教会であげたんだって。

『その後、私が出来た時に、ママは芸能界を引退して家庭に入ったの。

私が5才の時におばちゃんが亡くなったから、パパは私とお兄ちゃんとママの4人で日本に移り住んだの。

元々おばちゃんがやってた堀井下着って会社名だったのを、パパが継いで、ランジェリーHORIIに変えて、その後下着部門とは別に、靴下、ストッキングから見せる下着と商品を増やしていって、会社を部所ごとに分けて、社名が今のHOLLYグループになったんだって。』

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