CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=


翌日、僕は殆ど眠れないまま朝を迎えた。


正式な話は、まだ何もしていないので、両親には黙っていたい。


遅めの朝食を取ってから、僕はダウンのジャケットを着て表に出た。


DAELIM社の原付きバイクに乗って、名刺の住所を目指した。


松坡区 蚕室洞(ソンパグ・チャムシルドン)に在るロッテワールドホテルを少し行ったところに新星MUSICのビルを見つけた。


横に在る駐輪場に原付きバイクを停めて正面玄関前に立った。


入り口に立っていた警備員にお辞儀をして、昨日貰った名刺を見せながら、

「昨日、こちらの社長さんから来るように言われた朴需(パク・ユ)と申しますが、社長さんはいらっしゃいますか!?」


『はい。話は聞いています。

どうぞ中へ。正面のエレベーターで5階に上がって下さい。』


僕は言われた通り、5階に向かった。


エレベーターを降りて正面カウンターの中に居る秘書の女性に、
「今日の午後約束をした朴需(パク・ユ)と申しますが、社長さんはいらっしゃいますか!?」

と言うと、少々お待ち下さいと言いながら、インターフォンで来客を伝えている。


そして、
『どうぞ中へ。社長がお待ちです。』


扉を開けてビビった。

広くて高価なソファーや頑丈そうな、でっかいデスク。フカフカの絨毯。

まさにドラマに出てきそうな社長室って感じだった。


「お邪魔します。」

と言いながら中に入っていき、もう一度お辞儀をした。


『あぁ、良く来てくれた。
まぁ、座ってくれ。』

そして、両親を説得しなければいけないから、ホントにやる気が有るなら両親に、歌手になると言って許可を貰って来るように言われた。


契約書を渡されて、僕は帰宅した。


説得が出来て、契約書にサインを貰ったら、その契約書を持ってもう一度事務所に来るように言われた。


夜になって両親と姉さんの4人で晩御飯を食べている時に、僕はメジャーデビューの話をした。


姉さんと母さんは賛成してくれたのだが、父さんは聞いてもくれなかった。


食事中にいきなり席を立って、自分の寝室に入ってしまったんだ。


『ユ君、母さんはお前の夢を応援してあげるからね。

でもね、父さんはやっぱりあんたにはちゃんとした会社に入って、普通の暮らしをして欲しいんだと思うよ。』


「‥‥‥‥」
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