CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
5. Manager & Announcer
俺の名前は、桧山隆一。
入社してすぐに営業が出来ると思っていたけど、研修が終わったら、新入社員は全員、新星MUSICが経営する貸しスタジオやライブハウス、子会社のケータリングの会社に配属された。
これからの1年間は、各々指定された職場で過ごさなければいけなかった。
俺は、毎日毎日30分早く出勤して、最後まで残って清掃を済ませてから退社した。
アッと言う間に1年が過ぎ、日本支社に戻って来た。
日本支社に戻って最初の仕事が、希望していた通り営業課でタレントマネージャーだった。
俺は、ユニット歌手でTWINKLEと言う2人組のKiraと言う在日韓国人とLunaと言う韓国人を担当した。
彼女達の売り込むや、仕事を取りに走り回った。
彼女達は、歌手としてはそこそこだったけど、トークが片言の日本語を喋るLunaに日本語ペラペラのKiraがツッコミを入れるパターンが面白くて人気が出た。
顔も可愛くて、アイドルとしての素質も十分に合った。
軌道に乗ったTWINKLEを、翌年には後輩に引き継いで、今はKYUって言う韓国から来た歌手のマネージャーを担当している。
歌は巧い。実力は十分にある。
あがり症も克服出来るようになった。
本人も、やる気十分である。
ルックスもモデル並だから、仕事を取って来るのも楽だった。
その代わり、一気に売れたタレントは、落ちるのも早いのが、この業界の常である。
如何に息の長いアーティストとして、この業界に居続けるかは、マネージャーの腕次第である。
俺は、出来るだけKYUの活動に無理が行かないようにと、スケジュールの調整が大変だった。
ダブルブッキングなんてもってのほかである。
TV局サイドや他のタレントにも迷惑をかけないように、スケジュール管理はキッチリしなければいけない。
KYU本人の管理も、ちゃんとしなければいけない。
タブロイド紙や低俗な三流雑誌に、変なスキャンダル写真を載せられても困るからだ。
何より、タレントの健康管理は大変である。
急な怪我や病気で、スケジュールに穴をあける訳にはいかないからである。
だから俺は、誇りを持って精一杯頑張っている。
寝る間も惜しんで。
そして、気が付いたら長く付き合ってきた彼女に別れを告げられた。