CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
俺がアボジの実家に戻って来たのは、夕方過ぎ。
台所からは、テンジャンチゲの良い匂いが漂ってきた。
その後すぐにジソンヒョンニムも帰って来た。
「お帰りなさいヒョンニム!」
『オゥ、ただいま!
チャンスはいつ帰って来たんだ!?』
「俺もたった今帰って来たところです。」
『そっかぁ。
ところでチャンス、お前に頼みが有るんだけど良いかなぁ?』
「俺が出来る事だったら何でも良いですよ!」
『実はなぁ、俺も今年から社会人だろ。
コモ(叔父さん)の会社で働く訳だから、日本語覚えといて損は無いだろう。』
「ヒョン(アニキ)は、アボジの会社で営業やるんですか?」
『まだ分かんないけど……いずれはプロデュースしてみたいよなぁ。』
「ですよね!ヒョンは音楽センス抜群だし、アーティストとしてやっていけるくらいですよ!」
『チャンス、芸能界は、そんなに甘い世界じゃないぞ!』
「そっすかぁ!?
日本にBig ●angってグループが来てたけど、大したこと無かったッスよ!」
『バかだなぁ。まだデビューしたばかりのグループが、いきなり日本に行って、その上、 李●憲とも共演したんだぜ。
彼等の親は、韓国じゃかなり影響力のある人間だから、そういうバックボーンがないと、この世界はキツいぜ。
まぁ、実力が有れば別だけどな!』
「マジかよ!?
じゃあ、ヒョンは実力もコネも有るから、ダイジョブですよね!?」
『俺は、タレントやアーティストに成るよりも、裏方の方が向いてるんだよ。
俺は人前やカメラの前で作り笑いなんか絶対嫌だから。』
「へ!?
…………
そんな理由?」
『悪いかよ?
おべんちゃら言うのなんか最悪だから。』
「まぁ、ヒョンなら分かる気がする。」
『と言う訳だから、今日からお前が日本に帰るまで、宜しくお願いな!
お礼は、……
そうだなぁ……
●AINの直筆サイン入りのギターが有るんだけど、それ遣るよ!
ギターも彼が昔ライブん時に使ってたやつだぜ。』
マジ? マ...マジ
あれ、メチャクチャ欲しかったんだよなぁ。
アボジが貰ったんだよなぁー。それをジソンヒョンニムが貰ってたんだ。
こりゃ頑張って教えるしかないな!
…………